返品という名の電車/金属ヘラ絞り加工・各種金属板金加工は埼玉の佐藤製作所|東京・神奈川・千葉

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返品という名の電車

名称 返品という名の電車

先日、紹介させていただきましたステンレスの絞りもの、10個納めたうち5個出戻りで作り主の私のところに戻ってきました(超恥!

大変不名誉なことなのですが・・・・

この品物は寸法精度がいろいろと厳しく、なおかつ図面にリミットが記入されていなくて(その場合普通のへら絞り加工になる)初回にいろいろと問題が出た品物で、その後入念な打ち合わせをして、高さ寸法のゲージなども支給してもらって(自分でも他ゲージを作りました)納めた品物でした。

で、ずいぶん間をおいて2回目の依頼が来たので「手絞り」だったか「油圧で絞ったか」等々忘れていたりしましたが、キモとなる寸法精度についての注意事項はアタマに入っていたので(あまりに厳しいので忘れたくても忘れられない)

「普通に絞ること」+「異様に厳しいところはゲージを当たる&もう一行程工夫する・・等々」でクリアできる。

つまり、初回の先様との打ち合わせと試行錯誤で、理論は確立されている・・・・・・。つまり全行程「プラモデルのようなキット状態」になっているので(「板寸法情報」、「各種工程用金型」、「支給&自作ゲージ」「絞り工程の工夫」)もう誰が絞っても簡単に制作できるシロモノ(これをプラモデル状態といいます)になっていたにもかかわらず・・・・・・・戻ってまいりました(大汗

引っかかったのは、いろいろ厳しい精度の中の1っケ所のみ。・・・・それは「ツバの平面度」

この平面度は無茶苦茶厳しいものの工程さえ確立すれば誰が絞っても簡単にリミットに入ってしまう。なおかつ仕上げた後(その部分のみは)ゲージなどで検品しなくても「リミットから外れる要素のない」楽な部分だったのですが(汗

結論は「納める前に定盤の上にツバ部分を乗せて、隙間ゲージ(0.1)を常盤とツバの間に差し込んでみて(何か所も)一か所でも隙間が空いていたら(0.1のゲージが潜ってしまう)NGであると、確認すればよかったワケです。

で、「何故しなかったか?」

これは、そんなことしなくても、「まずリミットから外れる部分でないから」です

では何故返品か?と申しますと、先日のこの品物の紹介記事の画像を撮るために、品物を積み上げたからです(高く積み上げてありましたよね?)普通そんなことしません(危険)品物を異様に高く積んで不安定にするなんて・・

撮影用なのであえて高く積んだところまではよかったのですが、割とドジなので、想定はしていたもののその後、期待を裏切らず落下しました。ツバは地面に接地した一部分だけゆがみます

この一部分が厄介で(全体的に反っているのは問題ない)修正が難しくなります。しかし普通の絞りものですと簡単にリミット内に入ってしまう(完全に治る)のですが、今回はそういうワケにはいきません。

ですから、定盤にのせて0.1の隙間ゲージで隙間を見るべきだったのですが(アホの子なので)その発想もなく出荷してしまいました

返品率50%。この理由は、おそらく残りの50%(5個)は床に落ちなかったモノと思われます

もう、これは直せないので新規に絞りなおすしかないのですが、そんなことはともかくそれ以前に「大変不名誉」(←それはいつものことなので、これ以上(名誉が)落ちる心配はない)・・・でもなく先様に迷惑をかけてしまったことが、一番問題・・・

信用は砂のように脆い(汗

それから、蛇足で、「床に落ちてツバが歪んだものを絞りなおして納める」について「とんでもねぇ話だ!!」と思われるかもしれませんが、普通のリミットの絞りものは簡単に直っちゃうのです。しかもクオリティーも落ちません(アルミとかその他ステンでも例外はあります)

ですから、このことに関しては白い目で見ないでください

当業界で、とんでもない品物とは、100個ある品物で後加工で「ガバリ」に入れると寸法がマチマチで「入るのと入らないのがある。あとゆるくて、ガタガタなのもある」(←つまり品質がバラバラ)あるいは「段ボールその他箱に入って送られてきたが、上の方はマトモな品物。しかし下の方はとても品物とは言えないクオリティーの絞りものが入っている。全体的に水準品は上の方の10%位。残り90%はスクラップ)「バリがきちんととれていない。あるいはバリは取れていて手は切らないがヘタクソで見苦しい。」「薄物削りなのに構成刃先が発生して切削面が荒れている。あまつさえ、それが全体の1~2個ではなく殆どすべての品物がその状態で流されていた」「その他」等々を指します。

これをやると、同業からも軽蔑されます。「高かろう悪かろう」「安かろう悪かろう」などありません。柔らかいものしか絞れない人でも丁寧にきっちり仕上げる人もいれば、雑な絞りしかできない人もいます。(これは難度関係ありません)

「丁寧な仕事は奇麗にやらなければならないけど、雑でいい仕事は雑でもいいんだよなぁ」的な発言をする職人は漏れなくすべての品物が雑なのだそうです

一度ついた根性は一生抜けないので、指導者(将官)は新人にまず、とにかく丁寧に仕事をさせる(速さはまだ求めない)一度雑に仕上げる根性が付いたらもうその根性は一生抜けないので、駆け出し(新人)の仕事ぶりは常に目を光らせる

稀にその手の根性が付いてしまった人間は(もう修正が利かないので)「はい、これまで」ということで、別の部署に配置する

これが基本になっているそうです。以前私が所属していた会社も新人(まだ成長過程)を除く絞り職人で「彼なら任せられるが、アイツにはこの仕事やらせてはダメだ」的なバラツキは一切ありませんでした。誰に任せても技量の差こそあれ仕上げる仕事は完ぺきなものばかり。

と、まぁ精神論の話になってしまいましたが、当業界のこの手のオモシロ話部門では、絞りはじめは難しいので、新人さんは神経を使います。その時に頭(カン)と力を同時に使いますので「顔が歪む」傾向が誰にでも出ます。力を入れて(踏ん張ることによって)顔をしかめるのは問題ないのですが「変な顔」になることに本人も気が付きません

これも指導者や先輩が目を光らせていて、固まってしまう前に何度も「オマエ、いま変な顔になってるぞ」とか「金魚になってますよっ!(なぜか口がパクパクするそうです。私はそれはなかったので知りませんが)・・・とお母さんみたいに、おちょくった口調で言われたり)どこの会社、中規模小規模工場、家内製工場も叩き込まれます

すると不思議なことに顔が変に歪まなくなるのだそうです(力を入れると、顔が歪みますが(それは問題ありません。それが普通です)その手の歪みではないので柔らかいものを絞っても神経をかなり使う部分、あまつさえ、普通のところでも歪んでしまうという罠についてのお話でした)

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